小林人
必要なことを必ずやる。あとは自然と木に任せておけばいい。
須木区の特産「須木栗」を生産して35年の崎山明人さんを訪ね、同区鳥田町夏木地区に向かった。
国道265号から脇に入り、田園の広がる一帯に崎山さんの栗園はある。
栗園は傾斜がきつい。同行した広報担当は息が上がってしまったが、崎山さんは軽快に移動する。その元気の秘訣を聞いた。
「栗が好きだから」と笑って答えてくれた。
崎山さんは、稲作と酪農を柱に営農していた家に生まれ、跡を継いだ。就農した時期は中学を卒業してすぐ。「子どもは大切な労働力でしたから」と当時を振り返る。
栗の生産を始めたのは30歳。栗園造成計画で植栽が始まった時頃である。「きっかけは須木の栗の神様と言われた山田弥四郎さん」。(※山田弥四郎氏…旧村内の山地に多く自生する山栗に目をつけ、開拓地に栗を植栽する事業を始めた。)その後、今に至るまで妻のサキミさんと2人で栗生産を続けている。
栗生産はまず冬の剪定から始まる。「台風で枝が折れると、2、3年は収穫できない」ため、剪定は木を低く保つ重要な作業だ。春先になると元肥で土を作る。芽が出、花が咲く時期になると、草刈りをする。「年に5回も刈る人もいる」程大変な作業。7月になると、実肥をし、土作りの仕上げ。害虫防除は必要最低限に留める。
必要なことは妥協せず徹底し、あとは自然と木に任すという方法を続けている崎山さん。 「栗を生産する過程は時期が決まっています。その一つひとつの時期を間違いなく、確実にすること。そして肥料や防除を過度にしないこと。あとは自然と木に任せておけば大丈夫。」
自分に厳しく、人や自然にやさしい。そんな崎山さんの人格が伺えた。
須木の雄大な自然の中で、そうして生産された須木栗は、すき特産(有)の集荷場や販売所で購入できる。今秋、崎山さんら生産者が手がけた須木栗をぜひ堪能してほしい。 (「広報こばやし」平成22年10月号掲載)