小林人
地元に愛される焼酎をつくっていきたい。
機械化による量産が主流の焼酎業界。その中で、手造りにこだわり、鑑評会で数々の賞を獲得してきた焼酎の杜氏がいる。内嶋光雄さん52歳。黒麹仕込みの芋焼酎を商品化したことでも有名な杜氏だ。現在、地元小林市の酒蔵、すき酒造㈱の杜氏として、2人の蔵子と焼酎造りに携わっている。
現在は仕込みの最盛期。味の7~8割を決めるといわれる麹造りと、昼夜を問わない蔵の温度管理に神経を尖らせる。
焼酎の世界に入ったのは19歳。某焼酎メーカーの焼酎蔵から始まる。そこで、蔵子として鹿児島県の4人の杜氏に師事。プロの焼酎造り集団の技術に触れる機会を得た。それぞれの杜氏の技術を吸収したことが、幅広い味の焼酎を世に送り出す内嶋さんの強みとなった。
蔵子としての修行中、大きな影響を受けた杜氏がいる。その杜氏は、業界指折りの名人。その杜氏のもとで6年間学ぶことができた。本来であれば、杜氏の技術は門外不出。その人も弟子は取らないことで知られていたが、熱意を買われ、1年間直接教えを受けることができた。
平成9年、屋久島の焼酎工場へ赴任。初めて一人で焼酎を手がけた。翌年、国税局主催の鑑評会で120を超える工場の頂点に立った。以後、屋久島を離れるまでの9年間、国税局と鹿児島県の鑑評会を席巻。杜氏として不動の地位を確立した。
平成18年、内嶋さんはすき酒造㈱の杜氏となる。翌年、焼酎造りを開始。昨年開催された国税局主催の鑑評会で、すき酒造㈱としては約半世紀の時を経て優等賞を受賞。その技術から産まれる焼酎は、舞台を変えても確かな価値を示し続ける。
「現在の目標は鑑評会で県の代表を獲ること」。内嶋さんは、酒質が年々向上していることに手ごたえを感じている。それは、昨年7月に竣工した木造の蔵に蔵付き酵母が付き始め、真の酒蔵へと成長していることにある。「焼酎造りは毎年が一年生。初心に戻って作らないと進歩はありません」。酒蔵と共に更なる成長を遂げようとする職人の意気込みがそこに見えた。
焼酎を杜氏で選ぶ飲み手も多い。内嶋杜氏の元へ訪れる愛好家も後を絶たないが、「地元に愛される焼酎でありたい」その一心で今日も酒蔵にこもる。
その思いが蒸留された焼酎。屈指の杜氏による渾身の逸品をぜひご賞味あれ。
(「広報こばやし」平成23年11月号掲載)