小林人
安全でおいしい果物をお客様に届けたい。
明治43年創業、約百年の歴史を持つ種子田健さんが管理する種子田梨園6号園にお邪魔した。果樹園に足を踏み入れると、果実の甘い香りが漂ってきた。
小林市は九州南部に位置する盆地である。その地勢特有の日照時間、一日の大きな寒暖の差などが果物の甘みを濃縮させるという。 多く降る雨は果実の天敵だが「ビニールハウスなどの設備でその条件もクリアできた」と種子田さん。
恵まれた気候と設備に加え、栽培の段階から果物の実を選別することによって、色合いが良く甘い「小林の果物」が作られる。
1本の果樹に、約2000房の実を残す。不要なつぼみや花、実を摘み取る。この作業を摘花(果)といい、5月から6月にかけて行われる。「木それぞれに個性があるので、残すつぼみや実の数は違う」という。木の特徴を見極めながらの繊細な重労働である。
昭和49年頃、小林市役所へ問い合わせがあった。
ぶどう狩りはできないだろうか―。
鹿児島市の団体がバス12台で本市への旅行を計画中で、ぶどうの産地として有名な小林市でぶどう狩りをしたいとの要望だった。
この相談に乗ったのは、市内でもぶどうの代表的な生産地である「種子田地区」。当時、12件のぶどう園が客を受け入れた。これがきっかけとなり、観光農園という新たなビジネスチャンスを見出すことになったという。
「安全安心でおいしい果物つくりを心がけている」と種子田さんは話す。そのため「有機肥料を使い、化学農薬は使用せず、【菌】を使って病害虫防除をする」という。環境にやさしい農家、『エコファーマー』として県に認定されている。
「果物以外にも、野菜や山菜の観光農園など、田舎の良さを活かした方法もあるのでは。1年を通して実のなる農園があってもよい」と観光農園の今後の展開も見据えている。
「ライバルであり、仲間」である種子田地区、坂下地区の農園と協力しながら、観光農園の発展に目を輝かせている。 (「広報こばやし」平成22年8月号掲載)