小林人
団員一人一人が地域のリーダー。
そんな地域密着の消防団を目指したい。
火災、自然災害、行方不明…。まちを襲う危機からわたしたちを守る「小林市消防団」。その団員500人を統率しているのが、芝原靖彦(52歳=野尻町三ケ野山)団長だ。今年4月に団長に就任。役職を越えた“仲間の輪”を信条に、組織運営に取り組んでいる。「団員一人一人にやりたいことや思いがあるはず。レクリエーションをして親睦を深めたり、既成観念にとらわれず、若い力と発想を団活動に反映できる、そんな“オリジナル”の消防団にしていきたい」。
もう一つの信条は“地域密着”だ。「学校活動でもなんでもいい。日頃から地域と交流して、地域の人から相談を受けられるような団員の集まりになれば、こんな頼りがいのある集団はない。まちおこし、地域おこしにもなると思う」。
芝原さんがまだ若い団員の頃、地域の高齢者から「煙突が危ないから掃除をしてくれ」と頼まれ、それは消防団の仕事なのかと、首をかしげながらも請け負ったことがある。だが、高齢化が進む今だからこそ、そういった活動が必要になると感じている。「できる範囲でいい。普段から地域の絆を深めておくことで、“いざ”というときに生きてくるはずだから」。
市民にとってより身近な消防団になるための工夫は、操法大会にも。芝原さんの発案で、一般用の観覧席をつくり、かき氷も準備。「早朝や夜遅くまできつい練習を続けた団員の姿を、もっと多くの市民に見てもらいたいよね。父の真剣な姿を見て、未来の消防団員も生まれるはず」。1月に行われる出初式も、市民が気軽に参加できるイベントにしたい、と模索中。こういった発想は、若者中心に創意工夫で客をもてなす野尻の伝統「のじり湖祭」の実行委員長を2度務めたこともある芝原さんならでは。ともに団活動に励み、プライベートでも親交のある梯真砂寛分団長(第10分団)は、「気さくだし、とにかく熱い。何にでも真剣で、消防団に限らず、いつも新しい発想で引っ張ってきた。この人になら付いていきたいと思える先輩」と信頼を寄せる。
仕事は養鶏。1年に無薬鶏50万羽を出荷している。それをほぼ一人で担っているというのだから、多忙な日々だ。しかし、いつ起こるか分からないのが、火災や自然災害。手元には常に携帯電話と無線機を置いている。趣味の渓流釣りにも「携帯電話の電波が入らないから」と、長らく行っていない。「気の抜ける瞬間がないのでは?」と問うと、「そう、常に気が抜けないのよ」と、気にもかけない様子で笑い飛ばした。
わたしたちのまちを守る小林市消防団。その団長は、面倒見が良く、きさくで熱い。そんな人だった。(「広報こばやし」平成26年8月号掲載)