小林人
喜びにあふれた躍動する音を六人心一つに奏でます。
先ほどまでの和やかな雰囲気から一変、凛とした空気を身にまとい、和太鼓の前に立つ6人の若武者。真剣な眼差しで、和太鼓の練習に励むのは、喜躍太鼓「六奏」。今年3月にデビューを果たした和太鼓グループだ。
自他共に認める個性豊かな面々は、今年36歳になる同級生6人組。
彼らが目指すのは、ふるさとに元気を伝えること。代表の石隈文太さんは「太鼓はあくまで道具のひとつ。自己満足ではなく、観てくれる人たちに活力や、明日への元気を伝えていきたい。その過程で自分たちも成長していければ」とテーマを語る。
発足のきっかけは、昨年7月。彼らの子どもたちが出演した北霧島太鼓チャリティコンサートに足を運んだときのこと。終盤に登場した一流の太鼓グループの演技を目の当りにし、衝撃を受けた。西立野義人さんは「人生観が変わった」と語る。
元々仲が良く、6人で何かしたいと話していた彼らは飲み会の場で即決。六奏が誕生し、8月から練習を始めた。
彼らを指導するのは、南西方の藍毘尼太鼓の大丸幸一会長、大野裕一代表と西小林保育園の神田由美恵先生。彼らの熱意に打たれ、太鼓のイロハを教えている。
普段は軽口を言い合う仲だが、練習になると真剣そのもの。週1回の練習に休む者はほとんどいない。特に弓場新吾さんは、練習の鬼。家でも寸暇を惜しんでバチを振っている。渋く味のあるタイプとメンバーは評価する。
音を合わせるだけでなく、寸分たがわぬ所作、力強さなど、動きの美しさも問われるのが和太鼓の特徴。「始める前は簡単だと思っていたが、リズムを気にすると形が崩れる。形を意識しすぎると音が合わない。本当に奥が深い」と武田慎一さんはその難しさと魅力を話す。
そして練習につぐ練習の末、遂に迎えたデビューの日。彼らはまきばの桜まつりのステージに立った。
味わったことのない緊張に襲われたが、「ステージに立つと楽しく叩けた」と大山功師さん。メンバーも頷き「音も心も一つになり、達成感があった」と振り返った。
家族からも高い評価を得たが、山口豊和さんは「やっとスタート地点に立っただけ」と満足はしていない。 自分に厳しい彼らだが、崇高な目標のために、確かな第一歩を踏み出した。
神田先生は「技術面でもまとまってきた」と労いつつも、「まだまだ叩くのに必死。観た人に元気が出た、と言ってもらえるようなチームに成長してもらいたい」と応援している。
現在は、7月に文化会館で行われる北霧島太鼓チャリティコンサートに向けて猛練習中。
「声がかかれば、いろんなステージを経験してみたい」。喜躍太鼓「六奏」の第一小節は始まったばかりだ。
(「広報こばやし」平成25年5月号掲載)