こばやしのヒト

「小林市で生まれ育った、というアイデンティティが欲しかった」と語った、「saboribar」を経営する木村洋文さんと「ベクターデザイン」代表の上野裕次郎さん。2015年に決起し宮崎県の西諸県郡(にしもろかたぐん)全域を舞台に、地域に密着した商品やイベントの開発、プロデュースに取り組む市民団体「西諸県軍」を結成しました。現在は地元の方々がまだ気づいていない「郷土愛」を発掘し、地域を超えて全国に広める活動をしています。

西諸県軍として今後やってみたいことはありますか?

上野 FMラジオ放送をやりたいと思っています。小林に戻ってきて西諸弁を聞くと「強烈だなぁ、この言葉!」って、すごく実感するんですよ。小林らしさの最たるものが、方言だと思う。

木村 言葉だけを伝えるラジオって、ダイレクトに良いものを伝える伝達手段ですよね。

小林市の誰々さんが育てている豚が逃げ出して市内全域で探している、みたいな……そんな情報いらねぇよ!って思うんだけど、FMラジオ放送で聞いたとしたら絶対面白い。方言なら言葉として直に伝えられて、共感してもらえるかなと。

お二人にとって「郷土愛」とは、どのようなものですか? 方言という手段を駆使して西諸県軍が伝えたいのは、愛郷心だと感じました。

上野 郷土愛って、ドヤれる瞬間じゃないかなぁ。

なるほど。

上野 「ここは俺の地元だよ」ってドヤることが、何回あるか。その回数が多ければ多いほど郷土愛は大きくなると思う。

木村 他所(よそ)に行った時も郷土愛は発揮できるものなんですよね。「え? もしかしてうまかっちゃん(*2)知らないの?」みたいな(笑)。

(*2)うまかっちゃん:ハウス食品 九州の味ラーメン うまかっちゃんのこと。

じつはおふたりを取材する前に、「西諸県軍という名前をはじめて聞いた時に、胸が熱くなった。思いつきそうで思いつかない」と、小林市役所・地方創生課の柚木脇さんが仰っていたんです。西諸県郡は小林市だけではなく、近隣の高原町やえびの市も含まれるんですね。

木村 行政は市町村単位で活動しているじゃないですか。市民団体の強みはそういう制限なく自由に動けることだと思います。高原町やえびの市まで巻き込めば、おもしろい動きが3倍に広がるかもしれないし、やりたいことも3倍に膨れ上がるかもしれないし、知恵だってたくさん共有できる。

上野 だから僕らは西諸県郡という地域全体で活動していきたい。

木村 今後はTシャツを売るだけじゃなくて、デザインからパッケージング、売り方もぜんぶ西諸県郡のひとたちと考えていきたいよね。必ず、もっとおもしろい地域になっていくから。



木村 洋文さん

1975年生まれ、高校まで小林市で過ごす。大学卒業後は海外を放浪し、スノーボードを教えながら生き延びる。帰国後は、商社と大手家具小売業でバイヤーやSV、経営企画の仕事をして35才の時に小林へUターン。稼業の家具屋を継ぎ、3年前、ライフスタイルショップsaboribarを商店街の空き店舗を使いオープン。今年3月に西諸県軍を立ち上げ、地元の魅力を勝手にPRし、商品開発やイベント等を積極的かつ自虐的に活動をしている。

上野 裕次郎さん

1972年小林市生まれ。県外の看板屋での知識を頼りに4年前、無謀にも地元小林でTシャツのスクリーンプリント屋を起業。持って生まれた手先の器用さと、「綺麗な仕上がり」へのこだわりで、なんとか軌道にのりはじめたところ。地元をどうにかしたいと思う人達との繋がりのなかで、面白い物を作っていく楽しさを実感している。