こばやしのヒト

ものをつくり価値を生み出し続け、「すごい」と認められている職人さんは、日々どんなことを考え、何に挑戦しているのだろう? どんなことに苦労してきたのだろう?

そう思い、今回はものづくりの名人を訪ねました。

 

 

卓越した技能士として国に認められた「現代の名工」のひとり、橋之口幹夫さんは、宮崎県伝統工芸品である籐製の家具、工芸品をつくっています。

 

籐(とう)製家具とは?30年変わらない代表作も

籐とは、熱帯アジア原産のヤシ科の植物です。橋之口さんは、この籐を使って椅子やテーブル、棚、ベッド、そして時計までつくっています。

 

 

手仕事の真髄

 

天皇陛下献上品の製作はもちろん、いまや国の卓越技能士「現代の名工」に選ばれた籐使いの名人は、籐工芸の魅力についてどのように考えているのでしょうか。

 

 

「手のぬくもりが通った作品が籐工芸。うちみたいに全工程を手作業でやってるところはまずありませんので、この一言に尽きると思います。

普通は籐を曲げるときに、スチームで加熱して型にはめて曲げるんです。それは楽なんですが、ひずみも生まれる。

うちはバーナーを使って膝で曲げていますので、籐が伸びません。私が10個つくったら10個が均一のものになります」

 

 

 

おかげさまで、自分があるんです

ご自身がつくる籐工芸にファンができたのは、宮崎県暮らしの工芸展への出展がきっかけだといいます。その後、個展の開催、さらには東京での物産展出展へとつながったそう。

 

 

 

「今年で橋之口籐工芸工房は83年目に入りました。私が現代の名工になれたのも宮崎県のお得意様が、広く言ったら九州、いまは日本全国まで買ってくれる方々が広がりましたけれども、『これをつくってください』『こんなものをつくれますか?』と、“つくるチャンス”をくださったおかげさまですもんね。

これはお客さんでないとできません。おかげさまで、自分があるんです」

 



橋之口幹夫さん

1934年に設立した「橋之口籐工芸工房」の2代目・代表。国の卓越技能士「現代の名工」。籐工芸は宮崎県伝統的工芸品指定。