こばやしのヒト
お茶の職人は、どのような想いでお茶をつくっているのでしょうか?取材にご協力いただいたのは、宮崎県小林市で製茶業を営む大出水拓磨さんです。
大出水製茶3代目。高校卒業後に「野菜茶業研究所」に研修生として入学。その後、山啓製茶株式会社で3年半流通や二次加工等に携わり、23歳の冬に小林市にUターン・継業した。
生産から焙煎までおこなう。こだわりの「深むし茶」
宮崎県の南西部にある小林市で3代続けてお茶農家を営む「大出水製茶」は、茶葉の卸売に加えて「深むし茶」「粉末緑茶」を製作・販売しています。深むし茶は香ばしさが残り、甘みの強い味わいです。
収穫した茶葉を乾燥させて「荒茶」にし、出荷するまでが一般的な農家の仕事。しかし大出水製茶は焙煎までおこないます。飲むひとが毎日飲みやすいようさまざまな試行錯誤をかさねた結果、「深蒸し」かつ「強めに焙煎にする」製茶法に至ったそうです。
研究を重ね、農林水産大臣賞を受賞
本場静岡での経験を活かし、家業を継いでからもお茶づくりの研究を重ねている大出水さんは、全国青年農業者会議という場で作業を効率化する機械を開発。宮崎県大会、九州大会と勝ち上がり、土地利用型作物部門で最優秀の農林水産大臣賞を受賞しました。
「茶畑の畝(うね)を耕しながら、水に肥料を溶かした液肥を散布できる機械を自作しました。自作することで作業を効率化し、機械の購入コストも削減できました。それまでと変わらない方法で栽培している畑と試験区の畑では、後者のほうが収量も多くなったんです」
拓磨さんの尽きない研究心には、つくり手としての強い想いが垣間見えます。
「どこの家庭にもいつも買っているお茶があって、飲みなれている味があると思います。突然、飲みなれているお茶が変な味に変わってしまったら、次からはそれを選びたくなくなってしまいますよね。うちのお茶を買ってくれているひとに、そういう思いは絶対してもらいたくない。
だから毎年買っていただくお客さんに『今年もおんなじ味だね』って言ってもらえるのが、じつは嬉しいんです」
大出水拓磨さん
大出水製茶3代目。高校卒業後に「野菜茶業研究所」に研修生として入学。その後、山啓製茶株式会社で3年半流通や二次加工等に携わり、23歳の冬に小林市にUターン・継業した。