小林のことば
小林市は、地理的に都城市とえびの市との中間に位置しており、歴史的な違いもあって、隣接した地区でありながらえびの弁(飯野・加久藤弁)とも都城弁とも微妙に異なるが、そのアクセントは都城方言の「尾高一型アクセント」に近い。基本的には、諸県弁と呼ばれ、特に小林市・えびの市・高原町で話される言葉は、「西諸弁」と呼ばれている。その特徴は、「促音化」と「徹底した縮音化・短音化」が特徴である。ハナ(花・鼻)の「ナ」が高く、アタイ(私)の「イ」が高く、ゴクロサァ(ご苦労様)の「サァ」が高い。ツケモン(漬物)の「モン」やタッチャガッ(立ち上がって)の「ガッ」が一音節となって、これも末尾を高く発音する。
また、形容詞の語形の変化を見ると、えびの市真幸地区では「コン カキャ アマカヨ」(この柿は甘いよ)という言い方があるのに対して、小林弁では「コン カキャ アメヨ」となる。南日本新聞社編『かごしま弁「国なまり探訪」』によると、「甘い・辛い・苦い」などの形容詞の語尾は、薩摩半島(西目)では古語「甘かる」の「る」の脱落した「カ語尾」が主流であるのに対して、大隅半島(東目)では「あまい・からい・にがい」の形容詞の語尾の連母音aiがeに転訛して、アメ・カレ・ニゲとなり、縮音化した言い方になる。これは、『都城さつま方言辞典』(瀬戸山計佐儀著)にも同様の指摘がある。
土地の行事に関する表現でも、小林では、5月7日の七草祝の雑炊を「ナナトコズシ」と言い、えびの市では「ナンカンズシ」と言う。小林で「鬼火焚き」は「オネッコタッコ」、えびの市では「タケハシカラシ」と言い方が異なる。
アクセントや語形の変化や語彙の異なっている点をいくつかあげたが、薩摩方言、なかでも諸県弁という同一文化圏の範囲の中の方言である点で、都城地区の方言、小林市、えびの市、高原町の方言は「諸県弁」として共通する方言と言える。