エピソードコンテスト結果

最優秀賞

応募者名 谷口 久恵
内容 白髪染めでかぶれた父。治療代が出るのか薬品会社に電話をするという。「東京の会社だから標準語でね。」と念をおす母。馬鹿にするなと言わんばかりに受話器を握る父。「あーもしもし。」いいぞ、よそゆき声。「あんですねー。」いかん、始まった父の「ですね」を付ければ標準語という勘違い。「びんたん毛を染めたならですね、ものができっせーしゅいがでっとですよねー。かいもかいっですが医者どんに行たならどひこばっかい戻っくいもんですかねー。」を繰り返す。父よ。聞こえていないのではない。東京の人にその状況は通じていないのだ。「こらぁ。話が合わんがよ。」敗北感など微塵も感じさせず、母に代わるおめでたい父なのであった。

優秀賞

応募者名 木村 ハルミ
内容 小林に滞在した友人の話。友人にとって、ティータイムに急須と漬物がお盆にのって運ばれてくるのは奇妙な光景であった。友人は私の祖母から小林弁を話しかけられ、愛想をよくしてその場をしのごうとしていた。
「かまんね」(祖母)
意味もわからず相槌ちと笑顔で返す友人に、祖母は箸でお漬物を掴んで差し出した。友人は一瞬戸惑い、頬を赤らませた。そして手を出さずに 口を開けたのである。祖母も私も大笑い。受けとる箸も皿もないので口を開けたのだという。』
お茶請けに漬物、そしてそれを手に受けるという風習は、異文化らしい。この出来事から25年あまり、時々思い返しては含み笑いし、今は亡き祖母を思い出す。

入選

応募者名 谷口 久恵
内容 94歳になるばあちゃんに会うのはとても楽しみなのだが、耳が遠いので、話をするときは大きな声を出すのに苦労する。私が質問しても全然違う答えが返ってくるから、会話はいつもばあちゃんの西諸弁マシンガントークの一方通行。
「おまぇや、今日は仕事はよ?休んをもろたとや?」たまに聞かれることもある。
「うん、一日休みだよ。」大きな声で答えるが
「はぁ?仕事や?」と聞き返される。
「一日やすみーっ。」
「おまぇも忙しかねぇ。」・・・もぅ!また聞こえていない。
「ひしてやすんっ!」とそれほど大きな声で言ったわけでもないのに
「へ、じゃっとや、暇をもろたや。」と通じる。
西諸弁って素敵だ。

入選

応募者名 鶴田 ルミ
内容 祖父は元猟師で、ウサギやハトなどをよく捕まえていました。庭で突如行われる解体ショーが私は大好きで、他の孫が「こわーい」と言って逃げる中、祖父のそばで一人「皮ってそうやって剥くんだ!」「おいしそうやね!」と歓声を上げながら眺めていたそうです。鶏を「こしたえる」のを見るのももちろん好きで、祖父から無言で渡される足で、ジャンケンをするのがたまらなく楽しい時間でした(切り口から出ている腱を引っ張ると指が曲がるので、それでグーチョキパーをする遊び)。今では庭先での解体を目にする機会は減っていますが、見るとあの楽しかった時間を思い出します。

入選

応募者名 森本 久幸
内容 とある飲み会。年配の人が、お湯割りのグラスを私の前に差し出してきた。「なんでこのタイミングなんだろう?」と思い、自分のグラスをコツンと当て乾杯した。まえを見てみると「え?」という顔をしている。他の人を見てみると、渡されたお湯割りを飲んでいるではないか。なんとも不思議な習慣だ。

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